【2026年7月】Mbed OSサポート終了——組み込みエンジニアが今すぐ知るべき移行先RTOSガイド

ARM公式IoT向けRTOS「Mbed OS」が、2026年7月をもってついにサポート終了(EOL: End of Life)を迎えます。既存のプロジェクトでMbed OSを利用している組み込みエンジニアの方は、移行を迫られる状況です。本記事では、Mbed OS終了の背景と影響、そしてZephyr RTOS・FreeRTOS・Mbed CEなど主要な代替RTOSを実用的な観点から比較します。今後の開発方針を決める参考にしてください。

目次

Mbed OSとは——ARM公式IoT向けRTOSの誕生と役割

Mbed OSは、Armが2009年ごろから推進してきたIoT組み込み開発プラットフォームです。特にARM Cortex-Mシリーズマイコン向けに最適化されており、無線通信(BLE・Wi-Fi)、RTOS機能、セキュリティ機能(Mbed TLS)をワンパッケージで提供してきました。

オンラインIDE・コンパイラや豊富なライブラリ、コミュニティを備えており、IoTプロトタイピングの定番環境として広く使われてきました。Arduino GIGA R1 WiFi、Arduino Nano 33 BLE、Arduino Nano RP2040 ConnectなどArduino Proボード群もMbedを採用しており、業界への影響度は非常に大きなものがありました。

なぜ2026年7月にサポートが終了するのか

Armは2024年7月に公式ブログで「Mbedプラットフォームおよびmbed OSは2026年7月をもってEnd of Lifeとなる」と発表しました。終了の背景にはArmの事業戦略の転換があり、IoTプラットフォーム事業よりも半導体IPコアのライセンスビジネスへの注力が優先されたとみられています。

サポート終了後は以下の変更が生じます。

  • Mbed.comのWebサイトおよびオンラインコンパイラ・IDEが閉鎖
  • バグ修正・セキュリティパッチを含む一切の更新が停止
  • コードベースはGitHub上にアーカイブとして残るが、メンテナンスなし
  • コミュニティフォーラム・ドキュメントの閲覧も不可に

組み込みエンジニアへの具体的な影響

既存のMbed OSベースのプロジェクトはコードが動作しなくなるわけではありませんが、以下の観点でリスクが増大します。

セキュリティリスクの増大

IoT製品に欠かせないMbed TLSを含め、脆弱性が発見されてもパッチが提供されなくなります。製品の長期運用を考えると、早急な移行判断が求められます。

オンラインツールの喪失

Mbed.comのオンラインコンパイラはプロトタイピングに便利でしたが、これが使用できなくなることで、ローカル開発環境への移行が必要になります。CMakeやPlatformIOなど代替ビルドツールの習得も求められます。

Arduinoエコシステムへの影響

ArduinoはMbedベースのボードをZephyr RTOSへ移行することを発表済みです。Arduino NanoシリーズやGIGA R1 WiFiユーザーは、新しいボードサポートパッケージ(BSP)への移行が必要になります。

代替RTOS比較——Zephyr・FreeRTOS・Mbed CEをどう選ぶか

Zephyr RTOS(推奨:新規IoT・マルチベンダー開発)

Linuxファウンデーション傘下のオープンソースRTOSで、2026年時点で1,500名以上のコントリビューターを擁します。BLE・Wi-Fi・Matter・Thread・Zigbeeといった主要IoT通信プロトコルをネイティブサポートしており、NordicやSTMicroelectronics、IntelなどがZephyr対応デバイスを積極投入しています。

ArduinoがMbedの後継としてZephyrへの移行を選択したことからもわかるとおり、IoT分野での「事実上の標準」になりつつあります。学習コストはありますが、長期的に見て最も有望な選択肢です。

FreeRTOS(推奨:小規模・リソース制約の厳しいシステム)

Amazon傘下のRTOSで、業界で最も広く使われている実績があります。カーネルが非常に小さく、フラッシュ数KB〜数十KBのマイコンにも対応できます。シンプルさが最大の強みで、ベアメタルに近い制御が必要な用途に向いています。AWS IoT Coreとの連携も容易で、クラウド接続IoTデバイスの開発に適しています。

Mbed CE(コミュニティフォーク:既存資産を活かしたい場合)

Mbed OSのコミュニティフォーク「Mbed CE(Community Edition)」は、有志によって継続開発が進められています。既存のMbed OSコードからの移行コストが最小限で済む点が魅力です。ただし、コミュニティ規模はZephyrやFreeRTOSと比べ小さく、長期サポートへの懸念もあります。レガシープロジェクトの一時的な延命策として検討する価値はあります。

移行にあたって押さえるべき3つのポイント

① ターゲットハードウェアのサポート状況の確認

使用しているマイコンやSoCが移行先RTOSの対応ボードリストに含まれているか確認してください。Zephyrはボードサポートパッケージ(BSP)が非常に充実していますが、マイナーなマイコンでは独自実装が必要になることもあります。

② 使用しているライブラリ・ミドルウェアの互換性

Mbed TLSで実装したTLS通信は、移行先でMbedTLSを継続使用できるケースが多いです(MbedTLSはArm傘下で独立継続予定)。一方、Mbed OS固有のドライバや抽象化レイヤーは書き直しが必要になります。

③ 長期サポートと商用サポートの有無

Zephyr RTOSはLTSリリースを提供しており、商用サポートを提供するベンダー(Wind Riverなど)も存在します。量産製品や長期メンテナンスが必要なシステムでは、商用サポートの有無も重要な選定基準となります。

まとめ:今すぐ移行計画を立てよう

Mbed OSのサポート終了は2026年7月、まさに今月です。既存プロジェクトが即座に動かなくなるわけではありませんが、セキュリティパッチや新機能の提供が完全に停止します。新規開発でのMbed OS採用は即刻中止し、既存製品については移行スケジュールを早急に策定することを推奨します。新規IoT・マルチベンダー開発にはZephyr RTOS、リソース制約が厳しいシンプルなシステムにはFreeRTOS、既存資産を活かしたい場合はMbed CEがそれぞれ有力な選択肢です。RTOSの選択は製品ライフサイクル全体に影響するため、技術的な判断を早めに行い、セキュリティリスクを最小化することが重要です。

※本記事の情報はArmおよびAdafruit公式ブログ、各RTOSプロジェクトの公式情報をもとに作成しています(2026年7月時点)。

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この記事を書いた人

組み込みエンジニア・IoTエンジニア向け情報メディア「エンジニアGO」の運営者。エンジニアのキャリア・転職・スキルアップに役立つ情報を発信しています。

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