「ラズベリー・パイ Pico を買ったものの、何から始めればいいのか分からない」——そんな疑問にまず結論から答えると、最短ルートは MicroPython と統合開発環境 Thonny を使い、まずLED点滅(Lチカ)を動かすことです。C/C++ の Pico SDK は後から学べば十分で、最初の一歩は数分で終わります。本記事では、2024年に登場した最新の Raspberry Pi Pico 2(RP2350搭載) を軸に、シリーズの違い・スペック・環境構築・最初のコードまでを、組み込み初心者の目線で整理します。
ラズベリー・パイ Pico とは?Pico / Pico W / Pico 2 / Pico 2 W の違い
Raspberry Pi Pico は、Raspberry Pi 財団が開発する低価格のマイコンボードです。Linuxが動く「Raspberry Pi 5」などのシングルボードコンピュータとは異なり、PicoはOSを持たないマイコン(microcontroller)で、電源を入れると書き込んだプログラムが即座に動く、電子工作やIoT機器の頭脳に向いた製品です。
シリーズは大きく4種類に整理できます。初代のPico(RP2040搭載)、それに2.4GHz無線を足したPico W、2024年登場の高性能版Pico 2(RP2350搭載)、そして無線対応のPico 2 Wです。無線(Wi-Fi/Bluetooth)を使いたいなら末尾に「W」が付くモデルを選びます。これから新しく始めるなら、性能とメモリに余裕がある Pico 2 系がおすすめです。
RP2350の主なスペック——2つのアーキテクチャを選べるのが最大の特徴
Pico 2 が搭載する RP2350 は、Raspberry Pi 財団が設計した高性能かつセキュアなマイコンです。最大の特徴はデュアルコア・デュアルアーキテクチャで、業界標準の Arm Cortex-M33 2コアと、オープンハードウェアの Hazard3 RISC-V 2コアのどちらかを選んで使えます。動作周波数は最大150MHz、SRAMは512KB、オンボードFlashは4MBと、初代RP2040から大きく強化されています。
さらに RP2350 は、Arm TrustZone をベースにした署名付きブート、鍵を保存する8KBのアンチヒューズOTP、SHA-256アクセラレータ、ハードウェア乱数生成器(TRNG)といったセキュリティ機能を備えます。IoT機器では改ざん対策やセキュアブートの重要性が高まっており、学習段階からこうした仕組みに触れられるのは実務にもつながる利点です。なお RISC-V が選べる点は、世界的に存在感を増すRISC-Vアーキテクチャを、身近な低価格ボードで試せるという意味でも注目されています。
開発を始めるために必要なもの
用意するものはシンプルです。Raspberry Pi Pico 2(またはPico 2 W)本体、データ通信対応のUSBケーブル、そして開発用のPC(Windows / macOS / Linux いずれも可)。Lチカから一歩進めるなら、ブレッドボード、ジャンパーワイヤ、LED、抵抗(220〜330Ω程度)があると配線の練習ができます。ボード上にはユーザーLEDが載っているため、外部部品なしでも最初のプログラムは動かせます。
MicroPythonで最短で動かす(Thonny+Lチカ)
初心者に最もやさしいのが MicroPython です。RP2350向けにも MicroPython 1.24 以降が提供されています。手順は次の通りです。
(1) Raspberry Pi 公式サイトから Pico 2 用の MicroPython の .uf2 ファイルを入手する。(2) Picoの「BOOTSEL」ボタンを押しながらPCにUSB接続すると、USBメモリのように認識されるので、そこへ .uf2 をドラッグ&ドロップする。(3) 自動で再起動したら、統合開発環境 Thonny を起動し、右下のインタプリタで「MicroPython (Raspberry Pi Pico)」を選ぶ。これで準備完了です。
オンボードLEDを点滅させるコードは、わずか数行です。
from machine import Pin
import time
led = Pin("LED", Pin.OUT) # Pico W / Pico 2 W はオンボードLEDを "LED" で指定
while True:
led.toggle()
time.sleep(0.5)
Thonnyの実行ボタンを押すと、ボード上のLEDが0.5秒ごとに点滅します。これが動けば、環境構築は成功です。Pin("LED") の部分を Pin(25) のようにGPIO番号へ変えれば、外付けLEDやセンサーの制御に発展させられます。
C/C++ SDK(Pico SDK)を使う場合
より高速な処理や省メモリが必要になったら C/C++(Pico SDK) の出番です。RP2350には Pico SDK 2.0 以降が対応します。CMakeとGCC(Arm用ツールチェーン)を用意し、SDKのサンプルをビルドして、生成された .uf2 を同じくBOOTSELモードで書き込みます。MicroPythonに比べて環境構築の手数は増えますが、リアルタイム性やハードウェア制御の自由度が上がります。まずMicroPythonで動作の全体像をつかみ、必要になった段階でC/C++へ移行するのが、挫折しにくい進め方です。
ESP32・STM32とどう使い分ける?
マイコンはPicoだけではありません。ESP32 はWi-Fi/Bluetoothを標準搭載し、ネットワーク接続の試作で人気です。STM32(Nucleoボードなど)は産業用途で広く使われ、豊富な周辺機能とArm Cortex-Mの実務スキルを学ぶのに向きます。ざっくり言えば、学習と電子工作の入り口はPico、無線ありきの試作はESP32、業務での組み込み実務を意識するならSTM32という使い分けが目安です。1枚に絞らず、目的に応じて手元に複数持っておくと学びが広がります。エッジでAIを動かす一歩先の話は、組み込みAIのモデル軽量化入門もあわせて参考にしてください。
よくある質問(FAQ)
Q. プログラミング未経験でも始められますか?
始められます。MicroPythonはPythonの文法で書けるため、最初の一歩のハードルは低めです。まずはLチカを動かし、次にボタン入力やセンサー読み取りへ少しずつ広げるのがおすすめです。
Q. Pico と Pico 2 のどちらを買うべき?
これから始めるなら Pico 2(またはPico 2 W)が無難です。処理性能・メモリに余裕があり、RISC-Vコアやセキュリティ機能など新しい要素も試せます。既存の教材が初代Pico前提でも、多くはそのまま、または軽微な修正で動きます。
Q. 学んだスキルは仕事につながりますか?
つながります。GPIO制御・I2C/SPI通信・RTOSといった組み込みの基礎は、産業用マイコンでも共通の土台です。組み込みからエッジAIへ広げる道筋は、組み込みエンジニアがエッジAI人材へキャリアアップする方法で詳しく解説しています。
🔧 手を動かして試すための機材
型番の改訂が多い分野のため、常に現行品が並ぶAmazon検索結果へのリンクにしています
本記事の主役。無線を使うなら Pico 2 W が便利
Lチカや配線の練習に必要な基本パーツ一式
Wi-Fi/BLE内蔵。ネットワーク接続の試作を比較したいときに
I2C/SPIの波形を確認できると原因切り分けが速くなります
※Amazon.co.jpのアフィリエイトリンクを含みます
まとめ
ラズベリー・パイ Pico は、OSを持たないマイコンならではの「電源を入れれば即動く」手軽さで、電子工作やIoTの入り口に最適なボードです。最新の Pico 2(RP2350)は、Arm Cortex-M33とHazard3 RISC-Vを選べるデュアルアーキテクチャ、150MHz動作、512KB SRAM、そしてTrustZoneベースのセキュリティ機能を備え、学習から一歩進んだ試作まで長く使えます。まずは MicroPython と Thonny でLチカを動かし、慣れてきたらC/C++やセンサー制御、無線通信へと広げていきましょう。手を動かすほど、組み込み・IoTの世界は面白くなっていきます。
※本記事にはAmazon・楽天のアフィリエイトリンクが含まれます。製品仕様は各公式情報(Raspberry Pi公式ドキュメント)に基づいて記載しています。




