「RISC-V、最近よく聞くけど組み込みの現場で本当に使えるの?」――そう感じているエンジニアは多いはずです。2026年、RISC-Vはエッジ×AIの分野で急速に普及フェーズへと移行しています。本記事では、2026年3月に開催されたRISC-V Day Tokyo 2026 Springの内容を中心に、市場の最新動向と組み込みエンジニアが今押さえておくべきポイントを解説します。
RISC-Vとは?組み込みエンジニアが注目すべき理由
RISC-Vは、カリフォルニア大学バークレー校が開発したオープンソースの命令セットアーキテクチャ(ISA)です。ARMやx86と異なりライセンス料が不要であるため、チップベンダーや大学・スタートアップが自由にカスタムプロセッサを設計できます。この柔軟性が、特定のAIワークロードに最適化されたエッジデバイス向けチップの開発に大きな強みを発揮しています。
組み込み分野ではすでにSiFive、StarFive、Alibaba(T-Head)などが実績のある製品を展開しており、低消費電力かつカスタマイズ性の高いRISC-Vコアは、IoTゲートウェイや産業機器への搭載が増えています。
2026年のRISC-V市場動向
市場規模:2026年に約30億ドル、2034年に256億ドルへ
市場調査会社の複数のレポートによると、RISC-Vオープンアーキテクチャの採用市場は2026年に約30億ドル規模に達し、その後2034年まで年平均成長率(CAGR)約30.7%で拡大し、256億ドル超に到達すると予測されています(出典:GIIリポート)。この成長はAI関連の半導体需要とエッジコンピューティングの拡大が主要因です。
エッジAIが最大の牽引役
ABI Researchの調査では、エッジAI対応RISC-Vプロセッサは2030年までに累計1億2,900万個の出荷が見込まれており、その大部分はエッジAIゲートウェイや産業用センサーノードが占めています(出典:@IT / ABI Research, 2024年)。2024年時点で産業・IoTセクターはRISC-V応用分野の28.2%を占める最大セグメントとなっており(出典:GIIリポート)、この傾向は2026年以降もさらに加速するとみられます。
また、EE Times Japanの報道(2025年10月)によれば、RISC-Vの市場シェアはすでに25%を超えており、「予想を上回る成長」を続けているといいます。エッジAIの主戦場となりつつあるRISC-Vは、AIモデル推論コストの高騰を背景に、より効率的なカスタムシリコンを求める動きと完全に合致しています。
RISC-V Day Tokyo 2026 Springで見えたトレンド
2026年3月5日、東京大学本郷キャンパスで「RISC-V Day Tokyo 2026 Spring」が開催されました。テーマは「AIとCPUの融合、チップ試作、商用システム」で、研究者・エンジニア・学生ら400〜500名が参加する国内最大級のRISC-V技術カンファレンスです。
MetaのデータセンターRISC-Vアーキテクチャ発表
注目を集めたのが、Metaによる「データセンターRISC-Vアーキテクチャ at the Frontier」と題したキーノートです。大規模クラウド事業者がRISC-VをデータセンターレベルのAIインフラに適用する取り組みを公式に発表したことは、RISC-Vが組み込み・エッジ領域だけでなく、サーバーサイドのAI処理にまで応用範囲を広げていることを示しています。
チップレット技術と国内スタートアップの台頭
カンファレンスではチップレット設計やFPGAを活用したRISC-Vコア試作に関するセッションも多数あり、国内スタートアップや大学研究室によるシリコン実装事例が報告されました。少量多品種のカスタムチップをコスト効率よく開発できるRISC-V+チップレット構成は、国内組み込みメーカーにとっても現実的な選択肢になりつつあります。
組み込みエンジニアが今すべきこと
RISC-Vはまだ「動く」と「最適に動く」のギャップがあり、特に動画処理やAI推論のチューニングには専門知識が必要です(出典:Aries Insight, 2026年)。ただし、エコシステムは急速に整いつつあります。組み込みエンジニアとして今やっておくべきことを3点挙げます。
第一に、RISC-Vの命令セットと主要ベンダーのコアを把握することです。SiFive U74やT-Head C906など、広く使われているコアの特性を理解しておくと、製品選定の際に役立ちます。第二に、FreeRTOSやZephyr OSなどRISC-V対応RTOSの環境構築を試すことです。ZephyrはRISC-Vへの対応が成熟しており、IoTデバイス向けの開発に実践的です。第三に、エッジAI推論フレームワークとの連携を学ぶことです。TensorFlow LiteやONNX Runtimeのエッジ向け最適化版がRISC-Vに対応しており、MCU上でのAI推論実装の知識は今後の差別化要素になります。
まとめ
RISC-Vは2026年、エッジAIと産業IoT分野を中心に急速な普及フェーズを迎えています。市場規模は約30億ドルに達し、2034年には256億ドル超が見込まれています。RISC-V Day Tokyo 2026 SpringではMetaのデータセンター応用が発表されるなど、用途はクラウドにまで拡大しました。一方で、現場への適用にはチューニングや周辺エコシステムの理解が不可欠です。組み込みエンジニアにとっては、今がRISC-Vを本格的に学び始める絶好のタイミングといえるでしょう。
参考情報源:
・RISC-V 協会「RISC-Vデイ東京2026春」https://riscv.or.jp/rvd2026sj/
・@IT「エッジAIに対応するRISC-Vの開発が進む? 2030年までに1億2900万個を出荷 ABI Research」https://atmarkit.itmedia.co.jp/ait/articles/2403/06/news065.html
・EE Times Japan「RISC-Vは予想超える成長 けん引役はAIと中国」https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/articles/2510/28/news070.html
・GII「RISC-Vオープンアーキテクチャ導入市場 予測レポート」https://www.gii.co.jp/report/smrc2043812-risc-v-open-architecture-adoption-market-forecasts.html
・Aries Insight「2026年、RISC-Vはどこまで来たのか」https://b.aries67.com/riscv-20-percent-reality-2026/

