2026年、半導体業界に歴史的な転換点が訪れた。長年x86(Intel・AMD)とArm(Arm Holdings)の2強が支配してきたプロセッサアーキテクチャ市場に、RISC-Vが「第3の柱」として確固たる地位を確立したのだ。市場調査機関の最新データによれば、RISC-Vのグローバル市場シェアは25%に到達し、自動車向けシリコン出荷の約25%をRISC-Vベースのチップが占めている。かつてアカデミックなオープンソースプロジェクトとして始まったISA(命令セットアーキテクチャ)が、今や世界の産業インフラを支える基盤技術となりつつある。
RISC-V Internationalの発表によれば、累計でRISC-Vコアの出荷数は100億個を超えた。NVIDIAが自社製品スタック全体でRISC-Vコアを10億個以上出荷するという累計マイルストーンを超えたこと、EUが€2億7,000万をRISC-Vエコシステムに投資したことも、この動向を後押しした。RISC-Vはもはや「実験的な技術」ではなく、世界の半導体産業の主流技術となっている。
NVIDIAが1億個超のRISC-Vコアを出荷──AI加速器への組み込みが加速
意外に思われるかもしれないが、世界最大のGPUメーカーNVIDIAはすでにRISC-Vの最大の採用企業の一つだ。NVIDIAはGPU内のマイクロコントローラー(ファームウェアコントローラー、電力管理ユニット、セキュリティプロセッサなど)にRISC-Vコアを広く採用しており、その累計出荷数が1億個を超えた。H100やH200のGPUには複数のRISC-Vコアが組み込まれており、GPC(Graphics Processing Cluster)のスケジューラーや電源管理ロジックをRISC-Vが担っている。
エンジニアの視点から見れば、NVIDIAのRISC-V採用はアーキテクチャの柔軟性を示している。特定のISAに縛られることなく、用途に最適化したカスタムコアを低コストで開発できるRISC-Vの特性は、GPU設計の複雑化とともに価値を増している。CUDA対応の次世代アーキテクチャでは、さらに多くのRISC-Vコアがホスト・コプロセッサとして機能することが予想される。
Qualcommが24億ドルでVentana Micro Systemsを買収──高性能RISC-Vへの本命投資
2026年最大のRISC-V関連M&Aとして注目を集めているのが、QualcommによるVentana Micro Systemsの24億ドル買収だ。Ventanaは高性能サーバー向けRISC-Vコア「Veyron」シリーズで知られ、業界標準のRISC-Vコアの中でも最高水準の性能を誇る。QualcommはこのVeyronコアを自社の「Oryon」CPU(元々はNuviaCPUをベースとした高性能Armコア)アーキテクチャに統合し、RISC-Vとの融合製品を開発する計画だ。
この買収はQualcommの戦略的転換を象徴している。スマートフォン市場でのArmライセンス依存から脱却し、クラウド・エッジコンピューティング向け独自アーキテクチャを構築するためにRISC-Vを活用する動きだ。業界アナリストは、Qualcommの参入により高性能サーバー向けRISC-V市場が急速に成熟すると分析している。
中国のRISC-V独立戦略:Xiangshan・Ruyiの成果
地政学的観点から最も注目すべきRISC-Vの動きは中国だ。2026年3月、中国はXinhua通信を通じて国産RISC-VプロセッサとエコシステムのSの達成を大々的に発表した。北京大学・中国科学院が開発するオープンソース高性能RISC-Vプロセッサ「香山(Xiangshan)」は国際的なベンチマーク記録を更新し、世界初のオープンソースオンチップネットワークIPを含む。またネイティブRISC-Vオペレーティングシステム「如意(Ruyi)」は、RISC-V高性能国際標準RVA23に対応した世界初のOSとなった。
米国の輸出規制により先端プロセッサの入手が困難になっている中国にとって、RISC-Vは「技術自立」の切り札だ。Arm Holdings(ソフトバンクグループ傘下)はArmアーキテクチャのライセンスを政治的リスクと見なされうるが、RISC-Vはオープンな仕様として特定の国やベンダーに依存しない。中国のAlibabaグループのT-Headセミコンダクター部門は「玄鉄(Xuantie)」シリーズRISC-Vコアを開発し、国内IoTおよびエッジAI市場でのデファクトスタンダードを目指している。
自動車市場:2026年に25%、2028年に50%へ
RISC-Vの成長が最も著しい分野の一つが自動車向け半導体だ。2026年時点で新規自動車向けシリコン出荷の約25%がRISC-Vアーキテクチャを採用しており、専門家は2028年までにこの比率が50%を超えると予測している。自動車メーカーや自動車Tier1サプライヤーがRISC-Vに引き寄せられる最大の理由は「カスタマイズ性と長期サポートの保証」だ。
自動車製品は量産開始から10〜15年の長期サポートが求められるが、RISC-Vはオープンな仕様のためISAの急変リスクがない。ArmやIntelのIPライセンス料、サポート終了リスクを排除できる点が、コスト意識の高い自動車OEMに評価されている。Bosch、NXP、Renesas、STMicroelectronicsといった自動車向け半導体大手がいずれもRISC-Vコアの製品ラインアップを強化している。
CES 2026発表:DeepComputing RISC-V搭載Framework Laptop
CES 2026でDeepComputingが発表したDC-ROMA RISC-V Mainboard II(Framework Laptop 13用)は、RISC-Vの民生市場への浸透を象徴する製品だ。ESWIN EIC7702X SoCとSiFive P550コアを搭載し、合計50 TOPSのAI処理性能を実現する。Framework Laptopのモジュラー設計と組み合わせることで、ユーザーはx86マザーボードをRISC-Vマザーボードに交換してRISC-Vネイティブ環境を試すことができる。
また、2026年後半には初の商用RISC-Vスマートフォンが市場に登場すると予測されている。StarFive JH7110コアを搭載した開発者向けスマートフォンがすでにクラウドファンディングで資金調達を完了しており、エンジニアやハッカーコミュニティから強い注目を集めている。
エンジニアの視点:RISC-Vは「学ぶ価値がある」技術か?
RISC-Vの台頭はエンジニアにとって具体的なキャリアの機会を意味する。組み込みシステム、チップ設計、コンパイラ開発、OSカーネル開発など、RISC-V関連のスキルを持つエンジニアの需要は急速に高まっている。GCC/CLLVMのRISC-Vバックエンドは成熟しており、FreeRTOS、Zephyr OS、LinuxカーネルのRISC-Vサポートも十分な水準に達している。
特にHiFive Unleashed、SiFive HiFive1 Rev B、Lichee Pi 4A(T-Head TH1520搭載)などの開発ボードを使えば、数千円程度でRISC-Vの実機開発環境を構築できる。x86やArmの複雑なアーキテクチャと比較して、RISC-VはそのシンプルなISAにより、コンピュータアーキテクチャの学習にも最適だ。大学の授業でも急速にRISC-Vを採用する動きが広がっており、CS61C(UCバークレー)はすでにRISC-Vをメインアーキテクチャとしたカリキュラムに移行済みだ。
参考書籍・学習リソース(楽天で購入)
RISC-Vと組み込みシステム開発を深く学ぶための書籍・リソースをご紹介します。
▶ 楽天市場で「RISC-V アーキテクチャ」関連書籍を探す
▶ 楽天市場で「組み込みシステム プロセッサ」関連書籍を探す
▶ 楽天市場で「コンピュータアーキテクチャ CPU設計」関連書籍を探す
※本記事には楽天アフィリエイトリンクが含まれます。商品の価格・在庫状況は楽天市場の各ショップページにてご確認ください。記事内の情報は2026年5月時点のものです。

